社内の障害者雇用のお悩み
これから障害者採用を進めていく予定ですが何からはじめたらいいのですか?
今回人事異動で、はじめて障害者雇用の担当になりました。まったく知識がありません。
誰でもはじめは知識や経験が無いのは当然です。以前にも障害者雇用に取り組まれているのであれば、前任の担当者にお聞きしたり、引き継ぎの資料に目を通し関係していた機関(ハローワーク等)に一度訪問してみるのもよいかと思います。 あとインターネット上でも公開されている役経つ資料等は多数ありますので、調べてみてください。
障害者雇用促進法とはどのような法律ですか?
障害者雇用促進法という名前は聞くのですが、いまいち内容を理解できていません。教えてください。
雇用促進法とは正式には障害者の雇用の促進等に関する法律という名称なのです。労働法のひとつで、目的は障害者の雇用の安定と確保であり対象は、障害者と企業になります。
① 雇用義務制度(法定雇用率の設定)
事業主に対し、障害者雇用率に相当する人数の障害者を義務づける
- 民間企業・・・・・・・・・・・・・・2.0%
- 国、地方公共団体、特殊法人等・・・・2.3%
- 都道府県等の教育委員会・・・・・・・2.2%
② 納付金制度
雇用率未達成企業に対し、「納付金」を徴収、
雇用率達成企業に「調整金」「報奨金」などを支給する制度
- 障害者雇用納付金(障害者雇用率達成事業主)
- 不足1人 月額5万円
- 障害者雇用調整金(雇用率達成事業主)
- 超過1人 月額2万7千円支給
障害者雇用促進法が改正されると聞いたのですが本当ですか?
どのように改正されるか知りたいです。あと雇用率はあがるのでしょうか?
本当です。障害者雇用促進法が改正される内容は
【平成28年4月1日施行】
1.障害者の権利に関する条約の批准に向けた対応
- ① 障害者に対する差別の禁止
- ② 合理的配慮の提供義務
- ③ 苦情処理・紛争解決援助
【平成30年4月1日施行】
2.法定雇用率の算定基礎の見直し
- ◎
- 法定雇用率の算定基礎の対象に、新たに精神障害者を追加【施行期日 平成30年4月1日】。
- ◎
- 法定雇用率は原則5年ごとに見直し。
- ⇒
- 施行後5年間(平成30年4月1日~平成35年3月31日まで)は猶予期間とし、精神障害者の追加に係る法定雇用率の引き上げ分は、計算式どおりに引き上げないことも可能。
- ※
- 具体的な引上げ幅は、障害者の雇用状況や行政の支援状況等を踏まえ、労働政策審議会障害者雇用分科会で議論。
【法定雇用率の算定式】
【激変緩和措置の内容】
- ○
- 平成25年4月1日~平成30年3月31日
身体障害者・知的障害者を算定基礎として計算した率(2.0%) - ○
- 平成30年4月1日~平成35年3月31日
身体障害者・知的障害者を算定基礎として計算した率と身体障害者・知的障害者・精神障害者を算定基礎として計算した率との間で政令で定める率 - ○
- 平成35年4月1日以降
身体障害者・知的障害者・精神障害者を算定基礎として計算した率
社内での法定雇用率2.0%に達成しているかどうかはどのように計算されるのですか?
勤務時間であったり、障がいの重度や軽度によって法定雇用率の計算方法は変わりますか?
障害者法定雇用率とは事業主に対して、その雇用する労働者に占める身体障害者・知的障害者の割合が一定率(法定雇用率)以上になるよう義務付けています(精神障害者については現在雇用義務はありませんが、雇用した場合は身体障害者・知的障害者を雇用したものとみなされます)。 勤務時間や障害の程度による雇用カウントは下記図を参考にしてください。
【計算例】(雇用者数が500人の場合)500人×2.0%=10人
週の所定労働時間 | 30時間以上の労働者 | 1人=1カウント |
---|---|---|
20時間以上30時間未満 | 1人=0.5カウント | |
重度身体・重度知的 | 30時間以上の労働者 | 1人=2カウント |
20時間以上30時間未満 | 1人=1カウント | |
身体・知的・精神 | 30時間以上の労働者 | 1人=1カウント |
20時間以上30時間未満 | 1人=0.5カウント |
障害者雇用納付金制度で雇用できていないと必ず1人5万円徴収されますか?
逆に雇用人数が法定雇用率を超えていた場合は、お金をもらえるとも聞いたのですが。
障害者雇用納付金制度とは法定雇用率未達成の場合→障害者が1人不足するごとに1ヵ月当たり5万円を徴収されます。常用雇用労働者が100以上200名以下の事業主は5万円→4万円(平成27年4月~平成32年3月まで)と制度適用から5年間は、納付金の減額特例が適用されます。
逆に法定雇用率を満たしている企業を対象に障害者雇用調整金が分配され(200名超事業主)超過1人 月額2万7千円支給されます。
常時雇用している労働者数が200人以下の事業主で、各月の雇用障害者数の年度間合計数が
一定数(各月の常時雇用している労働者数の4%の年度間合計数又は72人のいずれか多い数)を超えて障害者を雇用している場合は、その一定数を超えて雇用している障害者の人数に21,000円を乗じて得た額の報奨金が支給されます。
常用雇用労働者が 100名を超えています。どのような対応が必要ですか?
これまで障害者雇用は関係ないと思っていましたが、100名以上は対象になると聞き焦っています。
平成27年4月から常用雇用している労働者が100人を超える事業主は障害者雇用納付金制度の対象となります。では適応対象になるとどのようになるのでしょうか?
まず平成28年4月から、前年度(平成28年度は平成27年4月から平成28年3月まで)の雇用障害者数をもとに下記の対応が必要です。
- ①
- 障害者雇用納付金の申告を行っていただきます
(法定雇用率 2.0%達成企業も申告が必要) - ②
- 障害者の法定雇用率を下回る場合は、障害者雇用納付金を納付する必要があります
- ③
- 障害者の法定雇用率を上回る場合は、調整金の支給申請ができます
制度適用から申告・納付開始までのスケジュール
- ※
- 年度(27年4月~28年3月)の途中に事業廃止した場合(吸収合併を含む)は、廃止した日から 45日以内に申告・申請が必要です。
障害者が雇用できていなくても納付金を払えば済むと上司に言われますが、いいのでしょうか?
障害者雇用の社内の理解がありませんので、なかなか採用できず毎年納付金を払ってます。今後どのようになりますか。
納付金を支払えば済むから雇用しなくてもいいという企業担当者の方もいらっしゃいます。
しかし CSR(企業の社会的責任)の側面と雇用促進法の観点から言うと、今後雇用できていない企業はどんどん厳しい障害者雇用に迫られ結果的に採用しようと思った時に採用できず会社として損失になってしまう可能性が高いので早くからの対応が必要です。
では雇用ができていないとどのようになるのでしょうか?下記の図をご覧ください。
障害者雇用ができていない場合のリスクとながれ
- 毎年6月1日の状況を報告。過去には納付金の支払いに対し株主からの訴訟になったこともあります。
- 場合によっては、公的な案件の受注停止や、代表、役員がハローワークから呼び出されることもあります。
- 雇用状況に改善が見られない企業等は公表を前提とした特別指導となり、最後には代表が厚生労働省へ行くことになります。
- 障害者雇用ができていない企業として、厚生労働省より社名が公表されます。イメージ悪化と売り上げにも影響がでます。
障害に関するお悩み
障害者の種別や等級がなんとなくしか理解できていません。教えてもらえませんか?
身体障害や知的障害でも等級の区分が違ったり、発達障害の方はどの区分になるのかわかりません。
企業の障害者雇用は障害者手帳をお持ちの方の人数が雇用カウントとなります。
身体障害者の場合は 1級~7級、知的障害者はA・B(愛知県)、A1・A2・B1・B2(岐阜県、三重県)、精神障害者も障害の程度により1級~3級の区分がございます。発達障害者、精神障害の分類に入るケースが多く、てんかんも同じで精神障害者保健福祉手帳になります。
■身体障害
- ・
- 視覚障害
全盲、視野狭窄、弱視等の障害 視力・視野等の障害 - ・
- 聴覚又は平衡機能の障害
先天性、中途失聴などの理由による聴力の状態の不自由さ - ・
- 音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障害
聴覚障害を理由とする言語機能の喪失や、疾患等による声帯機能の喪失など - ・
- 肢体不自由
上肢・下肢・体幹の運動機能障害や脳性麻痺・脳疾患による運動機能障害など
- ・心臓、じん臓又は呼吸器の機能の障害
- ・ぼうこう、直腸又は小腸の機能の障害
- ・ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害
■知的障害
知能指数(70ないし75以下)を判断基準とする障害
■精神障害
- ・うつ病
- ・強迫性障害
- ・双極性障害(躁うつ病)
- ・統合失調症
- ・パニック障害・不安障害
- ・PTSD
- ・てんかんなど
■発達障害
- ・
- 自閉症スペクトラム障害
自閉症、アスペルガー症候群、その他の広汎性発達障害
- ・注意欠如・多動性障害(ADHD)
- ・学習障害(LD)
- ・チック障害
※上記の記載項目で網羅されているわけではありません。
障害者募集に関するお悩み
障害者募集を相談する機関はどのような組織や団体がありますか?
求人募集をしようと思うとハローワークくらいしか思いつきません。
他にも募集する手段や方法あれば教えてください。
まず障害者採用で募集をする場合には管轄のハローワーク(職安)で障害者求人として募集をする方法があります。
そのほかにはハローワークが春(2月)と秋(9月)に各県内(愛知、岐阜、三重)で大会場で障害者合同面接会を開催しますし、障害者の新卒の就職会なども開催される地域もあります。
あとは障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター、特別支援学校就労移行支援事業所、就労継続A型事業所等もありますので下記を参考にしてください。
●ハローワーク(職安)
ハローワークでは、障害者を対象とした求人の申し込みを受け付けています。
専門の職員・相談員が就職を希望する障害者にきめ細かな職業相談を行い、就職した後は業務に適応できるよう職場定着指導も行っています。
そのほか、障害者を雇用する事業主や雇用しようとしている事業主に、雇用管理上の配慮などについての助言や、必要に応じて地域障害者職業センターなどの専門機関の紹介、各種助成金の案内を行っています。また、求人者・求職者が一堂に会する就職面接会も開催しています。
●障害者職業センター
障害者に対する専門的な職業リハビリテーションサービス、事業主に対する障害者の雇用管理に関する相談・援助、地域の関係機関に対する助言・援助を実施しています。
- ・愛知障害者職業センター
- 〒453-0015
愛知県名古屋市中村区椿町1-16 井門名古屋ビル4階 - ・愛知障害者職業センター(豊橋支所)
- 〒440-0888
愛知県豊橋市駅前大通り1-27 MUS豊橋ビル6階 - ・岐阜障害者職業センター
- 〒502-0933
岐阜県岐阜市日光町6-30 - ・三重障害者職業センター
- 〒514-0002
三重県津市島崎町327-1
●障害者就業・生活支援センター
障害者の暮らしや仕事について、総合的な支援を行っているのが、障害者就労・生活支援センターです。 公益法人(社団または財団)や社会福祉法人、特定非営利活動法人(NPO)などが運営しています。障害者の就職に関する相談、職場では話しにくい仕事上の悩み、お金の管理、健康上の問題などについて、具体的なアドバイスをしてくれます。
●特別支援学校
障害者等 が「幼稚園、小学校、中学校、高等学校に準じた教育を受けること」と「学習上または 生活上の困難を克服し自立が図られること」を目的とした日本の学校のことです。
愛知県、岐阜県、三重県に数多くの学校があります。
●就労移行支援事業所
障害者総合支援法に定められた障害福祉サービスのひとつである「就労移行支援」を提供する事業所です。 働くことへ障害のある方に、仕事をする上で必要なスキル等を身につける職業訓練のほか、面接対策などを通して就職活動をサポートする場所。
●就労継続A型事業所
通常の企業に雇用されることが困難な身体、精神、知的の 障がいのある方や難病の方に『働く場』を提供する事業です。
障害者雇用の助成金はどのようなものがありますか?
障害者雇用の助成金があると聞きましたが、どのような助成金がありますか?
それは障害者雇用をすればどの企業ももらえますか?
障害者雇用の助成金はいくつかあります。
「施設面等のハード面」は高齢・障害・求職者雇用支援機構、「賃金等のソフト面」はハローワークとなりますが、助成制度は推移が早く、その認定の為には様々な前提条件が必要なケースもあります。
障害者雇用納付金制度に基づく助成金は、その負担の軽減を図ることで障害者の雇い入れや継続雇用を容易にしようとする制度です。
ジョブコーチ制度というのをお聞きしたのですがどのようなものですか?
障害者のどのような支援を行ってもらえるのでしょか?
どのような制度なのか教えてください。
ジョブコーチとは「職場適応援助者」が正式名称で、都道府県に最低ひとつある「地域障害者職業センター」に設置されています。
内容は障害者、事業主、そして障害者の家族に対して、職場適応に関するきめ細かな支援をする公的なサポート制度で障害者の職場適応を図り、障害者雇用の促進や職業の安定を図ることを目的としています。
また採用時にジョブコーチを本人と企業側の意思疎通のための翻訳者として活用したり、雇用導入部~安定的な就労までの数か月間支援に入ることができる制度です。